社会・経済ニュース
2020年04月28日号
政府が発表した4月月例経済報告によると、国内景気判断について「新型コロナウィルス感染症の影響により急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある」として、2ヵ月連続で下方修正した。リーマンショックの影響を受けた2009年5月時の景気判断は「急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」としていたが、今回の景気判断で「極めて厳しい」と「極めて」という表現を用い、厳しさが増していることを表わしている。野村證券の試算では2020年4〜6月期の実質国内総生産は前期比23.9%減となるとの厳しい見方をしている。
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大を受け、日米欧や中国、ロシアなど20カ国・地域(G20)の農業担当相によるテレビ会議が行われ、「世界の食料安全保障の確保に向け緊密に協力するとともに、あらゆる不当な制限措置を回避する」ことで合意した。食料自給率が低い日本にとって、農産物輸入が輸出規制で受けるダメージは大きいものがあり、ひとまず輸出規制が回避されたことになる。ロシアが農産物の輸出規制に動き出す姿勢が見られる中で、機先を制した合意ともいえる。
日銀は金融政策決定会合で、これまで堅持してきた国債保有残高の増加幅の上限を年間80兆円まで段階的に引き上げてきたことを改め、上限を撤廃することを決定した。新型コロナウィルス感染拡大で疲弊する企業の資金繰りや家計を支援するとともに、急激な金利上昇を防ぐ狙いがある。黒田日銀総裁は「リーマンショック時より資金繰りは厳しい。企業、家計ともに問題が生じないよう拡充したい」と会見で説明している。
日本製紙連合会はトイレットペーパーやティッシュペーパーなどの衛生用紙の3月国内出荷量は20万522トンになったと発表した。前年同月比27.8%も急増し、現在の統計を開始した1989年以降で最高となった。新型コロナウィルスによるインターネット上でのデマ情報から買占めが進んだことが背景にある。衛生用紙以外では、経済活動の停滞が響き、チラシに用いられる塗工紙は21.0%減、コピー用紙向けの情報用紙は9.2%減となった。
日本百貨店協会の発表によると、4月1〜16日までの主要百貨店の売上高が前年同期比約65%減だったことが明らかになった。3月の百貨店売上高は過去最も大きく減少した1998年3月の20.8%減を上回る33.4%もの減少となっており、4月は非常事態宣言を受けてからの休業もあり、過去最大の減少率となることは避けられない状況にある。また、日本フランチャイズチェーン協会の発表によると、3月の主要コンビニの売上高は前年同月比5.8%の減少となった。
英世論調査会社のユーガブが世界26カ国・地域で行った新型コロナウィルスに関する調査によると、感染防止対策として「通勤通学を避ける」と答えた日本人は18%にとどまったことが分かった。フィランドとならび、調査対象国・地域で最低となった。他方、「感染を恐れている」とする日本人は87%と高い水準に達していた。多くの日本人が感染に恐怖や不安を抱きながらも、通勤通学している人が多いことを浮き彫りにした。
財務省の貿易統計によると、3月の輸出は前年同月比11.7%減の6兆3579億円となったことが分かった。新型コロナウィルスにより経済活動が落ち込んだことによるもので、とりわけ米国への自動車などの輸出が大きく減少した。下げ幅は円高が進行した2016年7月イラ、3年8か月ぶりとなる。輸入は5.0%減の6兆3529億円で、原油価格の下落により減少した。同時に発表された2019年度の貿易収支は1兆2912億円の赤字となり、赤字は2年連続となった。
財務省が行った新型コロナウィルス感染症による企業活動への影響に関する調査によると、企業の64.6%が売上高などが「減少した」と答えていることが分かった。売り明け高の減少幅をみると、最多は「2割以内の減少」の32.2%で、「2〜5割程度の減少」(21.5%)、「5割以上の減少」(10.9%)が続いた。業種別にみると、運輸や飲食・宿泊といったサービス業の95.5%が減少した。一方、スーパーなどの小売業は31.7%が増加したと答えている。感染拡大が長期化すれば、一段と売上高の減少の拡がりが危惧される。